口座番号は教えないように
どこかに出会い系への偏見があった私は、とにかく「怖い」印象が先立って、なかなか出会い確実.COMを利用するに至りませんでした。
まったく興味が無いわけではないものの、パソコン自体も会社のもので事足りていたので、家にある型の古いパソコンは目下のところ調べものをするに留まっていました。
これを利用して出会い系サイトを始める気にもなりませんでした。
しかし、転機が訪れたのはある一通のメールからです。
普段利用していたメールボックスに、女性からのメールが入っていました。
「私は女社長をしている身の女性です。
仕事が常に人生の傍らにあったせいで、男性と満足な付き合いも出来ずに、気がつけば40歳になっていました。
よろしかったら、私と一緒に食事に行きませんか?もちろんタダとはいいません。
月に100万円で検討して貰えませんか?」。
知り合いしか知るはずのないメールアドレスに、なぜ見ず知らずの女性からのメールが来るんだろう・・・疑い出したらきりがありませんが、純粋に仕事の繋がりで私を知り得た誰かだろうという結論に達しました。
私は「食事だけなら」ということで返信しました。
もちろん、定年以降、減る一方の経済環境で、月100万の収入が何より魅力的であったのも事実です。
家族が居ない身だからこそ、お金がなくなっていく怖さが先立ってしまっていたのです。
普段から逆援人気サイトランキングを見るぐらい切羽詰っていました。
そんな折の彼女からの連絡は、運命だとさえ感じていました。
メールには、URLが記載されてありました。
そこのサイトを彼女は利用しているようで、そこでの彼女のユーザー名はM子。
彼女のメールを読むかぎり、そのサイトで“M子”を探すことから始まりました。
見つけることはそれほど難くなかったものの、問題はM子にコンタクトをとるためのメッセージを送信するには、サイトのポイントを購入する必要があったのです。
まあ、これくらにならいっか、と私はクレジットカードでポイントを購入しました。
メールを送ると、返信はただちに送られてきました。
同じような文体で、彼女からだという確信はありましたが、奇妙だったのは「お金は約束事が成立してからの支払いでいいですよね」と、金銭のやり取りの点を強調してきたところです。
更に、具体的に会うことなどをメールしても、話は発展せず、逃げるような言い回しが目立つようになりました。
人生そんなもんだろ、とあきらめていた私は関係を辞めようとメールで切り出しました。
すると、踵を返したように、彼女は「会いましょう」と話を合わせてきました。
そして「会う前にお金だけ払っておきたいから、口座番号を教えてください」と申し出てきました。
しかし次のメールは「確実に100万円は、そちらの口座に支払います。
ですから、あなたも付き合う覚悟があるという意味で、こちらの指定する口座に10万円の支払いをお願いします」とのこと。
「お金はいいから、私はあなたに会えればそれで十分だ」、と私が返すと、今度は先述した10万円の請求がより脅迫的に強まったメッセージが届くように。
支払いを要求してきた時点で詐欺だとは感づきました。
それ以降は、返信もせず、相手からのメッセージも迷惑メールとして処理しました。
でも、ちょっとだけ出会いというものを信じてみたかった私は、そんな自分の甘さに、悔むような結果になってしまったようです。